「買い物しにいこうよ。」
母親にそういわれたのでなんとなく付いていった。ちょうど漫画の続きを買いに行こうと思っていたから。
「よしっ。漫画はこれだけかな?後はー、あ、そうだそうだ。ドクロちゃんだ。」
そう呟きながら僕は電撃文庫の本が並んだ棚に足を引きずりながら向かう。
「あれ?どこだっけ?ちょっと、一緒に探してよ」
「この辺じゃなかったっけ?」
などと母親と適当に話しながら目を流す。
「あぁあったあった。えーっと、2巻から全部買っちゃっていいっしょ?」
「え~、お金自分で払ってよ?」
「ちょ、ひどっ」
「他に無いなら早くレジ行って」
「いやまった、他にもなんかないかなぁ?面白そうなの」
最近僕は本を読むのにハマっているのだ。なぜかわからないが、急に面白くなった。
人はそうやって自分の才能を見つけていくのだろうか?まだまだガキな俺にはよくわからないのだけれど。
「お、ハルヒあるし。あーでも絵があんま好きじゃないんだよなぁ。」
「このブレイブストーリーって言うのが今人気らしいよ?」
「いや俺はそういう絵はあんま好きじゃない。例えばー、そうだなコレとか。」
俺は何気なく本をポンポンと叩いた。
「あぁ、なるほどね(ニヤッと笑いながら)」
「何笑ってんのw」
ん?待てよ、なんとなくしか見ていないが、じっくり見ればかなり俺のタイプの絵じゃん。
「ほら行くよ。」
「あ、ちょいまち。これ読んでみたい」
本を手に取り、パラパラとページをめくっていく。
「えー、なんかエロそうなんだけど」
「いやどこが?w まぁ試しに一冊な。よかったら続きも買うってことで。」
「はいはい、じゃあ行くよ」
そのなんでもない、ただの親子の買い物からこの物語は始まる。
なんとなく手に取った本。それが「半分の月がのぼる空」だった。